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徘徊―ママリン87歳の夏~|レビューと田中幸夫監督インタビュー

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映画:徘徊―ママリン87歳の夏~
レビューと田中幸夫監督インタビュー

徘徊―ママリン87歳の夏(配給:風楽創作事務所)は、
従来の認知症映画のイメージを
一変させてくれるドキュメンタリー映画。
2015年9月26日(土)から順次全国公開

不条理をユーモアでしのぐ

昼夜の別なく、繰り返される徘徊。
噛み合わない会話。

そんな不条理な生活をユーモアでしのぐ。

認知症を受け入れるとは
どういうことかを“平熱”で問いかける。

美しい構図に固執

~~・大阪市中央区北浜。
大都会のど真ん中に母と娘が住んでいる。
母:酒井アサヨさんは認知症。
娘:章子(あきこ)さんは
自宅マンションでギャラリーを営む・~~

二人に出会うまで
認知症映画を作ることになるとは
思っていなかったそうですね

田中幸夫監督
ええ。
私はテーマ主義の監督ではなく、
美しい映画を撮りたい監督なんです。

今回はたまたま酒井の母と娘と出会い
作ることになったのですが・・・
認知症の方と接するのは初めての経験でした。

二人に出会い、認知症を実感を持って感じることができました。

二人の会話は上質の喜劇であり悲劇でした。

認知症のイメージを取り除くこの明るさはなんだろう。
目の前で起きている事をもっともっと知りたくなりました。

この映画は強く感覚に訴える表現方法です。

この作品では認知症の多様性と
対処の仕方の一端を
笑いのうちに伝えることができたのではないかと思っています。

自宅のマンションで
2人が対峙する姿が印象的

田中幸夫監督
シャレた窓を背景に、
座卓につくアッコちゃん(章子さん)。
ソファーに座るアサヨさんが向き合う形は、
二人の生活の基本スタイルですが
ハイビジョン画面にぴったりと収まる
シンメトリーな美しい構図となっています。

しかし2人の強烈な個性が、
安定感と不安定感を同居させ
スリリングな雰囲気を作り出していました。

だから私は撮りたい衝動にかられました。

フレームで空間を切り取る以上、
【美しい構図に固執したい】
私の映画は美意識の上に成り立っています。

のがれられない実時間

アサヨさんが過去4年間徘徊した時間
1730時間。
アキコさんのマンションに同居してから
6年間に歩いた距離
大阪から東京3往復分になる。

アサヨさんの徘徊を見守る章子さんは
延々と流れる時間を感じていたのではないでしょうか

田中幸夫監督
そうですね。
映画のどこかで彼女が感じている
逃げられない実時間
を観客にも実体験してもらいたいとたくらみました。

そのために、意識的に、前半はテンポよく編集し
後半ひと段落ついたところで、
これっていつまで続くの?
と感じさせるシーンを置きました。

8分間を越えるワンシーン・ワンカットです。

徘徊の日常を理解し、
逃れられない実時間
を体験してもらえるはずです。

アッコちゃんに感情移入しながら
自分自身の問題として
考えざるを得ないシーンだと思います。

作品全体を
つらぬくテーマは

田中幸夫監督
私の映画に通底しているテーマ
覚悟
です。

この映画で言えば
状況そのものを受け入れる覚悟のあり様です。

アッコちゃんもアサヨと暮らし始めた
最初の2年間は
私の人生、これで終わった
と思ったそうです。

でも葛藤の末、覚悟した。
覚悟せざるをえなかった。

そこからアッコちゃんは
徘徊のデータを取り始めます。

傾向をつかみ、
対策を立てる。

それは、今日を明日につなげていく作業だったと推察します。

生きるベクトルをプラスに転じる覚悟を決めた人間に
私は人間の美しさの源泉である品格を感じます。

後ろの正面だあれ

作品の中で童話
かごめかごめ
を二人がそれぞれ歌っていますね

田中幸夫監督
かごめかごめは
後ろの正面だあれで
終わるけれど、後ろの正面は誰なのでしょうか?

徘徊するアサヨさんとアッコちゃんを見れば
後ろの正面はアッコちゃんだけれど、
時に後ろをついてくるアッコちゃんを見つめる
アサヨさんがいたりする。

それは、
私の姿が見えなくなるとちょっと心細いんですよ
というアッコちゃんの言葉にもあらわれています。

アッコちゃんも前を行くアサヨさんに
見守られているんですね。

見守り守られる関係
それが人間のつながりの原風景なのではないでしょうか。

かごめかごめ にはそんな
入れ子構造
を感じさせる狙いもありました。

見る人に何を感じて欲しいと思いますか

田中幸夫監督
地域の支えという問題も
考えて欲しいですね。

近所の人たちとの
うすい
ゆるい
熱くない
関係は、アッコちゃんにとって大きな支えです。

誰にでもできるレベルでの
小さな温かい支え。

それがどれほど大きな安心感になるか。

地域コミュニティ再生のヒントも
そこにあると思いますね。

私の映画は主人公たちへの応援歌です。

そして自分自身への応援歌であり
観客への応援歌でもある。

誰にでもおとずれる
笑わないしゃない!
人生の一時期。

そのとき、
ため息ではなく深呼吸を!

そんなきっかけになれば嬉しいですね。

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プロフィール

たぬか ゆきお

1952年兵庫県生まれ。
76年:映画プロダクションに入社
77年からフリーに。
テレビドキュメンタリー番組などを製作。
89年:風楽創作事務所設立。
劇場公開作品に
【未来世紀ニシナリ】
【凍蝶圖鑑:いてちょうずかん】
【日本の忘れ物】
【カメの翼】
など

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いかがだったでしょうか。

徘徊は、わたしたちからみれば特異な行動にみえますが、

本人のなかでは確固たるストーリーがあるんですよね。

もっともっと、認知症に対して理解を深め、地域全体での支援を進めたいですね。

以上、今回は、映画:徘徊―ママリン87歳の夏~のレビューと田中幸夫監督インタビューを紹介させていただきました。

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